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東京高等裁判所 平成5年(ラ)25号 決定 1993年2月25日

抗告人

甲野一郎

相手方

昭和リース株式会社

右代表取締役

佐藤功

右代理人弁護士

篠崎芳明

小川秀次

金森浩児

古田利雄

小川幸三

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、原決定別紙物件目録(18)及び(19)記載の不動産(以下「本件不動産」という。)に関する原決定を取り消し、相手方の抗告人に対する本件申立てを却下するとの裁判を求めるというものであり、その理由は別紙「執行抗告の理由書」に記載のとおりである。

二抗告理由は、要するに、抗告人は平成四年七月一三日に基本事件債務者兼所有者T株式会社の承諾の下に、本件不動産をその賃借人Oから転借して、本件競売の開始前からこれを占有しており、抗告人は執行妨害の目的で本件不動産を占有してるものではないというのであり、抗告人は、資料として、T株式会社とOとの間の本件不動産に関する平成四年七月一日付の賃貸借契約書及びOと抗告人との間の本件不動産に関する平成四年七月一三日付の賃貸借契約書(各写し)等を提出する。しかしながら、相手方代理人小川秀次は、当裁判所に対して、抗告人が同代理人に対して本件不動産には同年一〇月二九日に引っ越したと陳述した旨の報告書を提出しているところ、一件記録によれば、Oは、本件不動産について本件競売開始後の日である平成四年一〇月二一日に同年六月一日設定を原因とする賃借権仮登記をしており、右契約書の日付と異なっていること、同年八月一七日当時本件不動産はいずれも空室であったこと、本件不動産のいずれにも抗告人の住民票は存在しないことが認められ、右事実によれば、前示相手方代理人の報告書には信憑性があり(その反面として、抗告人提出の賃貸借契約書等によっては抗告人がその主張のように同年七月から本件不動産を占有していることを認めるに足りないものというべきである。)、結局、抗告人が執行妨害の目的で本件不動産を占有しているとする原決定の認定判断はこれを肯認することができ、本件保全処分に所論の誤りはないものといわなければならない。

したがって、抗告人は執行妨害の目的でT株式会社の関与の下に右の占有をしているにすぎない者であるというべきであるから、同会社の占有補助者ということができ、これに対して民事執行法五五条一項に基づき本件保全処分(公示を執行官に命じたことも含めて)を命じた原決定に違法はない。

よって、本件執行抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人の負担として、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官岩佐善巳 裁判官小川克介 裁判官南敏文)

別紙執行抗告の理由書<省略>

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